「技人国」から「特定技能1号」への変更:戦略的な在留資格の選び方と実務上の留意点
- みかん行政書士事務所
- 2月1日
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近年、日本の労働市場は歴史的な転換点にあります。これまでは「ホワイトカラー」としての在留資格「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」で活動していた方が、実務現場のニーズに合わせて「特定技能1号」へ変更するケースが目立っています。
しかし、この変更は単なる手続きの切り替えではありません。本人や家族の将来、企業のコストに多大な影響を及ぼします。今回は、申請取次行政書士の視点から、そのメリットとリスクを徹底解説します。
1. なぜ「技人国」から「特定技能」への切り替えが増えているのか
最大の理由は、入管審査の厳格化にあります。
「現業(単純労働)」の壁:技人国は専門的知識を活かす仕事が前提です。ホテルや飲食店で、接客やレジ打ち、清掃といった「現場実務」の割合が高いと判断されると、更新時に不許可となるリスクが非常に高まっています。
コンプライアンスの遵守:企業側も「実態は現場労働なのに技人国のまま」というリスクを避け、法令を遵守するために特定技能への切り替えを選択するようになっています。
2. 技人国 vs 特定技能1号:法的要件の違い
両者の最も大きな違いは、「学歴重視」か「試験重視」かという点です。
項目 | 技術・人文知識・国際業務 (技人国) | 特定技能1号 |
主な業務 | 翻訳、経理、企画、エンジニア等 | 介護、建設、外食等の現場実務 |
要件 | 大学卒業または10年以上の実務経験 | 原則学歴不問(技能試験+日本語試験) |
現業(現場作業) | 原則不可 | 可能(現場労働が主目的) |
在留期間 | 上限なし(更新可能) | 通算5年まで(特例あり) |
家族帯同 | 認められる(家族滞在ビザ) | 原則認められない |
3. 注意!私生活と将来設計への大きな影響
特定技能1号への変更には、慎重に検討すべき「負の側面」もあります。
① 家族ビザが危うくなる
技人国では家族と一緒に暮らせますが、特定技能1号は原則として家族を呼べません。 既に家族が「家族滞在」ビザで日本にいる場合、本人が特定技能に変えると家族のビザの根拠がなくなります。特例で「特定活動」への変更が認められる場合もありますが、裁量性が高く、不安定な状況になります。
② 永住権申請の「5年」にカウントされない
永住許可には「就労ビザで5年以上の在留」が必要ですが、特定技能1号の期間は原則としてこの5年に含まれません。 永住を目指すなら、速やかに「特定技能2号」へ移行するキャリアパスを描く必要があります。
4. 企業側に課される「10項目の義務的支援」
特定技能1号を受け入れる企業には、技人国とは比較にならないほど重い支援義務が発生します。
事前ガイダンス
出入国時の送迎
住居確保・生活契約支援
生活オリエンテーション(少なくとも8時間実施)
公的手続きへの同行
日本語学習の機会提供
相談・苦情への対応
日本人との交流促進
転職支援(会社都合離職時)
定期的な面談(3ヶ月に1回以上実施)
これらを自社で行うのが難しい場合、登録支援機関へ委託することになりますが、月額2万〜3万円程度の委託料が「企業側の負担」として発生します。
5. 【2025年・2026年最新】知っておきたい新制度
深刻な人手不足を受け、特定技能1号の制限も一部緩和されています。
6年までの在留延長(2025年9月改正):特定技能2号試験で合格基準点の「8割以上」を取得している等の条件を満たせば、最大6年までの在留が認められる救済措置が導入されました。
除外期間の拡大:産休・育休や、労災による療養期間は「通算5年」のカウントから除外されるようになりました。
結論:変更すべきかどうかのチェックリスト
行政書士として、迷っている方には以下の基準をお伝えしています。
変更を推奨するケース:
実際に現場作業が業務の過半数を占めている(コンプライアンス優先)。
技人国の更新で「学歴と仕事の不一致」を指摘された。
慎重に検討すべきケース:
家族が日本にいる。
すぐに永住権を申請したい。
特定技能1号は、決して「行き止まり」の資格ではありません。現場で熟練した技能を身につけ、特定技能2号へと昇華させることで、再び家族と共に安定して日本で暮らす道が開けます。
「自社のケースではどちらが正解か?」 個別の状況によって判断は異なります。
当事務所では、貴社の業務実態と本人のキャリアプランを丁寧にヒアリングし、最適な在留資格戦略をご提案いたします。お気軽にご相談ください。
